島田洋七
【 2007年05月05日放送】【95回】パート3
今日のゲストは、漫才コンビB&Bのひとりで、著書『佐賀のがばいばあちゃん』が
ベストセラーになったタレントの島田洋七さん。
パート2からの続きです♪
[漫才師になるきっかけ]
国分「どっから漫才師になろうと思ったんですか?」
島田「2、3日いてまあ遊ぶだけ遊んで帰ろうか、と。
野球部の先輩に電話したんですね。
そこに寄って帰ろう、というつもりでして。
それで先輩の所にいったら、先輩の奥さんが、
『吉本の花月、見に行ったら。おもろいで。』とか言われて。
それで、嫁はんと2人で、見に行って。
初めて見たんですよ。カウス・ボタンさんと仁鶴(にかく)師匠。」
国分「ほお。」
島田「ものすごい人気なんですよ、その当時。わぁ~受けて。
それで、裏に行ったら、たまたま吉本の駐車場があって。
そこから、ロールスロイスで仁鶴師匠、出て来て。
カウスさん、ポルシェで出て来たんですよ
『ほお!15分しゃべって、あんなのに乗れるのかな。』と思ってね。
ものすごく簡単な気持ちで吉本行って。『漫才師になりたいんです。』って。」
国分「でもそれ、大阪でたった1日なわけですよね。」
島田「うん、そん時は1日だけですね。」
国分「それで、漫才師になる、と。」
島田「うん。」
国分「それまた奥さんに話すわけですよね。」
島田「そうそう。」
国分「それ奥さんは、どういうリアクションなんですか?」
島田「嫁、何も言わんと。『頑張れや~』言って。」
国分「奥さんも、いい人ですね。」
美輪「さっきから不思議だったのだけれど、東京へ行って帰ってくるまでのお金は
どうやって工面なさったの?」
島田「嫁さんが21までデパートに勤めていて、貯金していたお金。
田舎で、だから使わないですからね、
それと僕は八百屋でバイトしてて、車を持っていたので、それを売って、2人で合わせて。」
美輪「大阪に行ったときはまだお金はおありになったの?」
島田「ありましたね、ちょっとしかなかったですけれど、4畳半のアパートを借りるくらいは。」
美輪「ああ。」
東京に来たときに失敗したのは、田舎でちょこっとドラマをみたときに、
『東京にはニューオータニしかない』と思ったんですよ。
何も知らないから。
高かったですよね。びっくりしましたね、あの前金預けて、っていう時に。
新婚と思われてスィートルームみたいな所に泊められて。
『新婚さんですか?』と言われて、僕たちも『はい』と答えてしまったんですよ。
家出というのが言い難くて。それで、スィートルームで新聞の職業欄を見てましたからね
ほんまによう、もう訳分からんかったですよ。
だって嫁はんが10円玉出してタバコ屋で浜松町で。
『東京の10円玉に替えて下さい』って言うたんですよ。」
美輪「ははは。」
島田「公衆電話の形が違ってたんですよ。
佐賀はね、まだ赤いのよ。こっちは時々、ブルーのが
あったんですね。
それで嫁はんも分からんからね。
タバコ屋さんも、『そんなのないんですけど』と。」
[漫才ブームの頂点で]
美輪「漫才ブームで売れまくってトップにいらしたでしょう?
あの頃は儲かってしょうがなかったんじゃありませんか?」
島田「あのときは、最高が月収8400万ていう。」
国分「月収!」
島田「うん。」
国分「それは今で言うと、もう1億以上は。」
江原「それは1億なんぼかどうか、ちょっと分かりませんけどね。」
美輪「その時は、まだおばあちゃん、ご存命でしたの?」
島田「ええ。」
美輪「じゃあ、お喜びでしょう。」
島田「喜んでいましたね。ただね、すごく売れて、おばあちゃんのところに行って、お金をね
『世話になったから』と持って行ったとき、ごっつう怒られましたね。。」
美輪「え、どうして?」
島田「『そういうお金は持って来るもんじゃない』と。」
美輪「素晴らしい。」
島田「ものすごく怒られましたよ、初めて。『線香代だけ、もらっておくから』って。」
美輪「何て、粋なの。」
島田「受け取らなかったですよ。で、その時に言われたんですよ。
ちょっと、その時、丁度ね、ちょっと漫才が下火になって。<ブームがね。br />
それで、さんまも、たけしも俺らも、紳介も。
もう、ひょうきん族くらいしかなかったんですよ
暇になったからって、ばあちゃん家に帰って。
その時、お金持ってたんです。
それを見てからばあちゃん、
『お前、ちょっとそこへ座れ』といって。
『ばあちゃん、暇になって』と言ったら『働け』と言われるのかと思ったら
『5年間遊べ』と言われましたね。」
[5年間遊べ]
美輪「どうして?」
島田「やはりちょっと浮いていたんでしょうね。昔のアキヒロじゃないみたいな。
やっぱり売れて、しかもおばあちゃんに対してお金を持ってくるみたいな。
『ここに座ってごらん。世の中、山あり谷ありと言うけれど、みんな勘違いしている。
谷も自分から降りていけ。谷に降りていったら、冷たいきれいな水が流れている。
水を飲んで体を洗って、もう1回、山に挑戦してみろ。
頂上というところは、記念写真を撮ったら降りてくるところ。
長くいるところじゃない』とスパーンと言われてね。
『谷には藻があって、フナが泳いで、鳥も来て、みんなそこに来る。
谷に住むのが普通、頂上は長くいるところじゃない』」
美輪「素晴らしい哲学ね。」
島田「それはしっかり覚えていますよ、僕は32くらいだったから。」
美輪「徳の高いお坊さんか、お上人みたいですね。」
国分「その言葉を聞いてから、5年間ゆっくりしようと。」
島田「それから2、3ヶ月して『ホンマやな』と。
贅沢しなかったらなんとか生活できるみたいな感じだったので。
でも7年くらい遊んでいました。
その間に海外に行ったり、日本中周ったりね。やはりそれがものすごく勉強になりました。
普通がわかったんですよ。売れていると、自分では普通と思っていても、
やはりどこか普通じゃないみたいですね。」
美輪「結局、自分を見つめられるし、自分を見失わないですんだということですよね。」
島田「そうですね。7年くらいたって『よっしゃ、もう1回頑張ろうかな』と思った時に、
もう自分の位置も地位もなくてね。
後輩ががんばっているの。紳助だの、タケシだの、さんまだの。
そのときにばあちゃんの言葉を思い出して、
『世間に見栄張るな、人のことを羨ましく思うな』これだけはず~っと思い続けろ、と
言われていたから、もう、うらやましく思わなかったね。
また1からぽつぽつやろうかな、という感じですね。」
国分「ほお。」
江原「だけど奥さん、素晴らしかったですね。」
島田「うん、俺は元々4畳半から出発してますから、大阪の。
何か言うたびにね、
『何やっても、お父さんいいから。4畳半より狭くはしないで。』と。
国分「でも、1度贅沢をしてしまったら、なかなか下に下がるということができなくなると僕は思ってしまうんですけれども。」
江原「そういう奥さんじゃないんです。そこをおばあちゃんが見抜いていらっしゃるの。
漫才でトップスターになっても洋七さんを導き続けたおばあちゃん。
この後、今は亡き彼女からメッセージが届きます~
[ばあちゃんの思い]
江原「おばあちゃんのおっしゃる事からすると、
一番に、やっぱり思ったのは奥さんの事で。
『この人なら大丈夫』ということだけを見抜いて『東に行け』
おばあちゃん自身はそこで『自分はもう必要ない、大丈夫だ』という気持ちが
強かったみたいですよ。」
美輪「バトンタッチね。」
島田「だから駆け落ちするときに、初めて会った嫁さんにばあちゃんが、
『りつこさん、よろしくお願いします』って、頭下げたときが一番辛かったですね。
千円札を米粒で貼り付けてね『何かのときに使いなさい。』
玄関のところで『アキヒロをよろしくお願いします、この子アホですから。』って、
そのときは『ばあちゃんにいらんこと言わしたな』って。」
江原「でもおばあさんとしてみたら。
そこが一番の安心でね。いい人連れて来た。
それでいて、この人なら大丈夫、ね。
だから、とにかく、このお嫁さんと、こうやってね、いられて。
助けられてるのもこれも、おばあちゃんのおかげですよね。
『とにもかくにも、お嫁さんを大事に』
でもそれはなさっていらっしゃるから、今さら言うべきことではないかもしれませんが、一応お伝えしておきます。
それから、佐賀に行かれたことを心から喜んでいますよ。」
美輪「それと、近所に何か氏神さまみたいな、神社。」
江原「神社なのか、それお寺なのか。」
美輪「お寺だかね。」
島田「お寺あります。日曜の朝、必ず行ってましたもん一緒に。」
江原「あ、やっぱり。」
島田「5時頃から説教聞くんですよ。」
美輪「それがね、大きな支えで、お守りになってらしたのね。」
江原「そうなんですね。」
[仏様の守り]
島田「そこへもう毎週。雨が降ろうが、何をしようが、日曜の朝は。」
美輪「そのお守りが、ご守護があったんですよ、洋七さんが成功なさったのは。」
江原「これだけ強いおばあちゃんでありながら、お寺に行くことを欠かさなかったというのは、仏さんとのつながりというか、そのお守りですよね。
それでいてね、お坊さんまでみえるんですよ。」
美輪「そう、そう。」
江原「で、このお坊さんて亡くなってらっしゃる方だけども。
ずっとその時に、会ってる方だと思うんです。」
島田「僕も会ってますよ。」
江原「ええ。その人が、さっき5年や7年遊んでしまいましたって、おっしゃったじゃないですか。
『それでも、恨みで使ったね。』って、こう言い方するんですよ。
だからいろんな意味で、順調だったかもしれないけど。
その順調の中でも、いっぱい心の垢も付いて。
どっかで何か『自分の得たお金は何だったんだ?』っていう
気分にもなったりで。
そういう何か、使い方だったんだっていう事を。」
島田「まあ、本当にそうですね。俺は、売れて人気者になったら何でも叶うのかな、と
思いましたけれど、全然一緒でしたね。
お腹も痛くなるし、風邪もひくし。
外車を買っても駐車違反で捕まったし、何にも変わらなくて。
お金があっても、結局3食以上はご飯を食べられないんですよね。
もう4、5日でわかりましたよ、『一緒じゃん』と。」
~どんなに忙しくとも、仏様に祈る事を忘れなかった、がばいばあちゃん。
強気な言葉に隠れた優しい心…それが洋七さんを守ったのです。
がばいばあちゃんに教わって、
かまどで、ごはんを炊く事を覚えた洋七さん。
当時は辛かった炊事の手伝いも、今思えば大切な学びだったのです~
美輪「荒神様か何か知らないけど。
かまどを、いつも思い出すようにすればいい、
みたいな事を言うんだけど何なんでしょうね?」
〔荒神様(こうじんさま)…各家庭を守るという「かまど〕の神様〕
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